2021年6月4日5,337 ビュー View

【取材】17歳で「今日、明日までの命」と宣告されたこころ。長生きの秘訣は「希望を持つこと」

12歳を超えても元気なダックスを、憧れと敬意を込めて“レジェンドダックス”と呼ぶことに決定! その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドダックスの肖像』です。今回は18歳目前のこころちゃんが登場します。死んでもおかしくない大ケガや病気と闘ってきたこころちゃんとママさん。その献身的な愛に支えられてきた足跡を振り返ります。

レジェンドダックス

こころちゃんプロフィール

ダックス

年齢&性別

17歳の女の子(2003年7月20日生まれ)

体重

3.7kg

大好きなこと

お散歩。ウッドデッキで、ひなたぼっこ。

既往歴:

・10歳のときに他犬に噛まれ4針縫う大ケガ。

・14歳のとき、歯石で上の奥歯と下の奥歯がくっついて口が閉じなくなり手術。奥歯を全部抜くと元気に。

・17歳で腎不全に。3日間入院し、点滴で少し回復したので退院。以来、毎日点滴をしています。

・退院後けいれんを起こし、脳梗塞の疑いが。以来、ステロイド投薬を継続。

 

10歳のとき、おなかを噛まれて4針縫う大ケガ

ダックス

目元の毛色がハート型なのがトレードマークのこころちゃん。オーナーのNさんご一家と暮らす17歳の女の子です。

 

パピーのころから、かなり元気でおてんばな女の子。

 

警戒心が強く、家の前を人が通るだけでよく吠えたので、ママさんはかなり手を焼いたそうです。

 

そんな活発な性格が災いし、10歳のある夜、思いもよらぬ悲劇が。

 

ママさんが勝手口のドアを開けた一瞬の隙に、こころちゃんが勢いよく飛び出して行き、

散歩中だった近所の犬に出くわします。

ダックス

 

「その犬は近所で子供を噛んだり、少し狂暴なところのある犬でした。

 

いつもは噛みつき防止の口輪をつけて散歩していたのですが、その日に限って娘さんが散歩させていて、口輪をしてなかったんです……。

 

突然飛び出してきたこころに驚き、パニックになったのか、こころのおなかをガブっと噛んで、そのまま振り回し、最後は地面に振り落とされました。

 

慌てて病院にかけこむと、深く噛まれてた部分は4針を縫う大ケガでした」

 

処置をした先生の話では、宙に浮くほど振り回されると、そのショックで亡くなる場合もあるそうです。

ダックス

 

「先生には“よく生きとったね。奇跡だね!”と驚かれました」

 

生命に別状がなく、ママさんもほっと胸をなで下ろしたそうです。

 

その後、深夜に突然激しく吠え出すことが3カ月ほど続きました。外を見ると、こころちゃんを噛んだ犬が散歩をしていたそうです。

 

「我が家の前が、その犬の散歩コースだったんです。

 

夜中なのにあまりに激しく吠え続けるので、“本当に申し訳ないんですけど……”とお願いをして、散歩コースを変えてもらってからは吠えなくなりました」

 

安心して眠れるようになって、こころちゃんもママさんに感謝したことでしょう。

 

17歳で腎不全に

ダックス

14歳のころ溜まった歯石が下人で上奥歯と下奥歯がくっついて、口が閉じなくなる事態に。

 

そのせいで水も飲めず、ごはんも食べられなくなってしまいました。

 

シニアのこころちゃんにとって、全身麻酔はリスクが大きいですが、悩んだ結果、抜歯手術を決断。奥歯を全部抜くことに。

 

「若いころ歯磨きをすごく嫌がったので、あきらめてしまったんですけど、ちゃんと歯磨きをしてあげて、歯石を取ってあげてればよかったと反省しました」

 

歯を抜いたら、すっかり元気に。それからはずっとなにごともない穏やかな日が続いていたのですが……。

 

次の異変が起きたのは、昨年9月。17歳になってからのことでした。

 

ある日、夕方の散歩から帰ると、突然けいれんを起こして倒れてしまったこころちゃん。ママさんがびっくりしていると、続いて嘔吐まで起こりました。

 

急いでかかりつけの病院で血液検査をしたところ、腎不全との診断でした。

ダックス

 

「先生から“点滴をしたけど治療しようがない。今日か、明日までの命でしょう。…何かあったら来てください”と言われて。

 

あまりに突然のことで、耳を疑いました。

 

それにまるで匙を投げられたみたいで…説明を聞いても納得できませんでした」

 

ママさんはかかりつけ病院を出たその足で、新しくできた別の病院へ。迷うことなくセカンドオピニオンを受けたそう。

 

「そこの先生は“厳しいね。でも、一緒に頑張りましょう”って言ってくれました。その言葉がうれしかった!」

 

入院をして3日間点滴を続けると、数値が少し回復。最初の病院で「今日か明日までの生命」と言われた日を乗り超え、無事退院することができました。

 

セカンドオピニオンの大切さを痛感

ダックス

腎臓の数値は今も高いので、退院後も点滴は欠かせません。

 

ママさんがベテランの看護師さんだったこともあり、先生からの勧めで今でも自宅で点滴を続けています。

 

「皮下点滴なので、じっとしてくれていれば、200㏄の点滴が10分ほどで終わります。今は点滴がこころの命綱なんです」

 

後から考えると、病気が発覚する1カ月くらい前から、以前よりもよく水を飲むようになり、おしっこの回数が増えていたそうです。

 

「それまでは、外でしかしなかったのに、家の中でもおしっこをするようになったんです。

 

食欲もあったし、散歩も嫌がらずに行っていたので、“まぁ年だし、しょうがないよね”くらいにしか考えていませんでした。異変には気づかなかったんですよね」

ダックス

 

点滴を続けていても、状態はゆるやかに悪化していくそうです。

 

「それでも今の先生は前向きで、病院に行くたびに“何とかしましょう!”と言ってくれるので、すごく心強いです」

 

ママさんは今の先生と出会い、セカンドオピニオンの大切さを痛感したそうです。

 

「もしあの日、別の病院へ行かなかったら、今、こころはいないかもしれません。

 

昨日まであんなに元気だったのに、“今日、明日の命だ”と言われても、全く信じられなくて。

 

もし、ふたつめの病院で同じことを言われたら、あきらめがつくと思いました。

 

思いきって行って、本当に良かったです」

 

腎不全に続いて、脳梗塞の疑いも

ダックス

腎臓を患った後も非情なことに、違う病魔が襲います。退院から1週間後、ごはんの後に、再びけいれんがありました。

 

病院では「脳梗塞を起こしているんじゃないかな」との見立てでした。

 

先生からは「MRIを撮るのは全身麻酔が必要で、シニアのこころちゃんにはリスクが高い。ですので、確定診断ではありません。

 

しかし脳梗塞か脳腫瘍の可能性が高いので、それにつながる治療をしましょう」と言われて、現在もステロイドを投薬しています。

 

「ちょっとでも長生きしてほしい」から、ごはんは手作り食に

ダックス

「腎臓サポートのフードや缶詰の療養食は、あんまり好きじゃなかったみたいで。

 

安くないのにあんまり食べてくれないので、手作りごはんにしてみたんです」

 

カボチャ、ニンジン、キャベツ、小松菜、ブロッコリー、サーモン、鶏むね肉を細かく切ったものを煮て、ごはんを少し混ぜてから、ミキサーで細かくし、消化をよくしたものをあげています。

犬の手作りごはん

 

若いころは、なかなかフードを食べてくれなくて、苦労していたそうですが、「今は食欲もあって、よく食べてくれますね。“若いころから手作りにしておけばよかった!”と思いました」

 

塩分の摂りすぎも腎臓に負担がかかるので、おやつもほどほどにしているそうです。

 

シニアでもあきらめずに希望を持ち続けたい

ダックスと家族

長寿の秘訣は、「希望を持つこと」と言うママさん。

 

「あきらめたくないんです。一緒に頑張っていきたいっていう気持ちですね」

 

ハイシニアとなり、毎日の点滴や手作りごはんと、若い頃よりも手がかかるようになったこころちゃんですが、愛情は時間とともに深まるばかり。

 

「本当にかわいいんですよ!」と、こころちゃんの話をするときは思わずママさんの声が1トーン高くなるほどです。

 

「昔からかわいかったのに、あんまり写真をあまり撮っていなかったんです。仕事があって、休日以外はあまり手をかけていなくて。

 

今でも、顔もしぐさもかわいいし、夜な夜な起きて、同じところをグルグル徘徊する姿もかわいくて(笑)。

 

病気をしてからは特に、こころ中心の生活なんです」

 

こころちゃんとの毎日のコミュニケーションも、大切にしています。

 

「犬って、人間の顔色を伺うので、私が怒っても笑っても、察するんですよね。

 

私が悲しむとそれがこころに伝わるから、病気だからとクヨクヨせず、いつも笑顔で接するようにしてるんです。

 

毎日点滴を頑張っているので、もし最期のときがきても、悲しむだけじゃなくて“よう頑張ったね!”って、こころを褒めてあげられる私になりたいなって思っています」

 

頑張り屋さんのこころちゃんに、先生も「生命力が強いね!」と驚いているそう。

 

「今は脳の影響で、後ろ足が少し調子が悪くて、しっかり立てないときもあります。

 

でも、なるべく自分で歩かせて、自分でできることはさせるようにしています」

ダックス

 

ご近所には、こころちゃんと同じ日に生まれた弟ダックスが暮らしています。

 

「弟は内臓が丈夫で、体重が6kgあるんですよ。

 

たまに会いに行くと、弟がこんなに元気なんだから、“こころも頑張らんといけんね!”って、励みになりますね。

 

病気になってからは私の子供たちも、“ちょっと様子がおかしいよ?”とか気にかけてくれていて。

 

こころを通して、家族がひとつになれたんかな。こころがいてくれて、ありがたいなぁと思います。

 

1日でも長く一緒にいたいですね」

ダックスと家族

 

インスタグラムのフォロワーさんから、「本当に17歳ですか?」と疑われるほど、若々しいビジュアルのこころちゃん。

 

この取材の後、すぐに虹の橋を渡っていきました。

 

最初の異変のときに、即座にセカンドオピニオンを受けたママさん。

 

いつまでも希望を持ち続けていたママさん。

 

献身的に介護をしたママさん。

 

そんな愛情いっぱいのママさんがいたからこそ、こころちゃんは最期まで頑張れたのではないでしょうか。

 

あきらめずに支えてくれたご家族と過ごす時間は、こころちゃんにとってもかけがえのない宝物だったはずです。

 

こころちゃんのご冥福を心よりお祈りいたします。

 

取材・文/都丸優子

 

 

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