2021年9月3日4,569 ビュー View

【取材】ドッグマッサージセラピストのママと暮らす18歳の銀次郎。その毎日は健康長寿のヒントでいっぱい

12歳を超えても元気なダックスを、憧れと敬意を込めて“レジェンドダックス”と呼ぶことに決定! その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドダックスの肖像』です。

今回登場するのは、先住犬の死をきっかけに犬の健康について学び、今はドッグマッサージセラピストとして活躍されている原五月さんと暮らす銀次郎くん18歳。その暮らしは、健康と長生きのヒントにあふれていました。

レジェンドダックス

銀次郎くんのプロフィール

ダックス

年齢&性別

18歳の男の子(2003年3月6日生まれ)

体重

5.8Kg

大好きなこと

ママさんのだっこ。若いころは、先住犬のラブラドールレトリーバーと遊ぶのが大好きでした。

既往歴

・パピーのとき、犬歯に引っかかった子どもの靴下を取ろうとして暴れ、犬歯が唇に刺さる。病院で麻酔をして歯を取るほどの大ケガに。

・1歳のとき、右後脚を骨折。

・8歳のころ甲状腺機能低下症に。現在も投薬を継続中。

・10歳で肛門まわりにできものができ、肛門周囲線種の手術。

・17歳で犬歯の付け根に穴が開き鼻腔まで貫通するほど歯周病が悪化。肝臓の数値も悪化。

 

シニアになって一番の問題は悪化した歯周病

ダックス

ドッグマッサージセラピストの原五月さんご一家と暮らす、18歳の銀次郎くん。

 

甲状腺以外は特に大きな病気をすることもなく元気に過ごして来ましたが、シニアになった今、一番大きな問題が歯周病です。

 

10歳で肛門周囲線種の手術をした際に、一緒に歯石を取ったものの、歳を重ねるごとに再び歯石がたまっていきます。

 

昨年4月、17歳で歯科専門医を受診、「20歳の銀次郎を見たい」という思いから、シニアに全身麻酔はリスクが高いことを承知のうえで、抜歯の決断をしました。

 

しかし手術の直前まで、ザワザワと胸騒ぎがしていたそう。

 

「じつは手術までの約3週間の間に、銀次郎は3回も倒れてしまったのです。

 

ヨロヨロと歩きながら突然バタッと倒れてしまったり、倒れてけいれんしていたことも…」。

 

しかし、病院に行っても原因はわからないまま。ご夫婦で相談した結果、やむなく抜歯は延期すること。

 

「もしかしたら、銀次郎の意思表示だったのかなぁ…」と、原さんが当時を振り返ります。

 

あのとき抜歯しておけば

ダックス

しかし、その後、歯周病はさらに悪化。今年4月には、鼻から出血がありました。

 

歯周病が進行したせいで犬歯の付け根に穴が開いたのが原因です。その穴は鼻腔まで貫通していたそう。

 

「シニアになってから、ごはんは柔らかいものをあげていました。

 

でも鼻腔に入って鼻に詰まってしまうので、今は硬めのフードと絡めて、鼻腔に入りにくいようにしたごはんをあげています」。

 

ダックス

また歯周病の治療で抗生剤を飲んでいたものの、原さんは長期にわたる投薬は効果が出にくくなるため、なるべく避けたいと考えていました。

 

そこで、銀次郎くんの口腔内の菌を採取し、対応できる抗生剤を調べてもらったものの、その抗生剤は体への負担が大きく、飲み始めて1週間で肝臓の数値が悪化。嘔吐もありました。

 

「あのとき抜歯しておけば今もなんでも食べられて、こんなに苦しまずにすんだのではと、今でも後悔が頭をかすめます」。

 

犬は歯周病になりやすいので、若い頃からの歯磨き習慣も大切。

 

愛犬が嫌がって歯磨きをなかなかさせてくれないというご家庭も多いかもしれませんが、根気よくなれさせていくことが大事です。

 

最初は短時間でもいいので、ぜひ毎日の歯磨きをがんばってみてくださいね。

 

シニアになる前に準備しておきたいこと

ダックスとレトリーバー

原さんは、福岡でドッグマッサージセラピストをしています。

 

銀次郎くんの先住犬だったラブラドールレトリーバーのラブちゃんは、8年前、13歳で虹の橋を渡りました。

 

「銀次郎もラブも、かわいいだけで家族に迎えました。

 

その結果、ラブをフィラリアにしてしまいました。犬のことをよく知らずに命を預かってはいけないと痛感しました」。

 

ラブちゃんを亡くしたことをきっかけに、原さんはドッグマッサージセラピストの勉強を始めました。

 

それまで営業職としてバリバリ働いていた原さんでしたが、新人時代からお世話になっていた顧客の方が背中を押してくれて、セラピストの道に転職する決意ができたそうです。

 

現在は、ドッグマッサージセラピストのほか、ドッグセラピスト講座の講師として、ドッグカフェなどでマッサージ教室を開催するなどの活動も行っています。

ダックス

 

銀次郎くんとの生活で、シニア犬との暮らしで大切なことを学ぶことも多いそう。例えば、シニアになってからスロープを作るのでは遅いんだとか。

 

「視力が落ちてきて危ないので銀次郎と一緒に寝ているベッドにスロープを作ったんです。

 

でも目が見えているときになかったものなので、スロープを避けようとするんですよね。

 

環境の変化に対応できるよう、若くて目が見えているときに準備することが大事だと学びました」。

ダックス

 

原さんは、講座を受講する生徒さんに、かかりつけ医をひとつに限定せずいくつか持っておくことやセカンドオピニオンの重要性も伝えています。

 

「シニアになってから銀次郎をいつもと違う病院に連れて行ったときに、すごく震えちゃって。

 

かかりつけの獣医さんと看護師さんは慣れてますけど、セカンドオピニオンでほかの病院に連れて行くと、すごくストレスがかかるんです」。

 

病気は早期発見がなによりも重要。しかしそれにも増して“病気にならないための予防”に勝るものはありません。

 

いつでも気軽に相談できる複数のかかりつけ医を持っておくことは、ぜひ参考にしたいですね。

 

日課は温灸とマッサージ

ダックス

東洋医学も学んでいる原さんによると、シニアは体を温めることが大事だそうです。

 

「夏は体を冷やしすぎると、体温を上げようと臓器に負担がかかるので、キンキンに冷やさないようにしたり、腰から下を温めてあげています。

 

腹巻もいいですね。特にシニアは、冷やしちゃいけないんです」。

 

“温活”として、銀次郎くんはお灸をしています。

 

「夏は腰だけですが、温灸は去年から毎日続けています。

 

一番最後の肋骨の付け根から、その背骨から2つ下がった背骨の両側にある、腎愈(じんゆ)というツボを温めると、老化防止になります。

 

お灸は手軽にできるシールで貼るタイプもありますし、うちは棒灸という棒状のお灸で温めています」。

ダックス

 

リンパを流すマッサージも日課のひとつです。

 

「ダックスは胴が長いので、“後ろ足の存在を早く忘れる”と言われているんです。

 

他のどの犬種でも、体重の7割が前足にかかっていて、後ろ足をあまり使っていません。

 

そのための後ろ足の筋肉から衰えていきます。そこで“あなたの足はここにあるよ”と意識させるため、毎日5分くらい後ろ足のマッサージは必ずします。

 

じっとしているのが苦手でマッサージがやりにくいワンちゃんもいるので、生徒さんには、抱っこしてるときに肉球や首もとのツボを押したり揉んだりするようにお伝えしています」。

 

温灸とマッサージで筋肉がやわらかくなり、後ろ足がしっかりするそうです。

 

毎日触ることで、痛がる場所を見つけたり、皮膚にできものを見つけたり。小さな異変にもいち早く気づけますね。

トレーニングするダックス

 

また、お家の中でも、なるべく足を上げるトレーニングを心がけているそうです。

 

「座布団やクッションを置いて足場の悪いところを歩かせたり、廊下に突っ張り棒を渡して、自分で足を上げてまたがせたりしています。

 

これは、リハビリを行っている先輩から教えてもらいました」。

 

床に座って伸ばした足をまたがせるのも、自然とトレーニングになるそうですよ。ぜひ真似したいテクニックですね。

 

20歳は盛大にパーティーをしたい!

ダックスと家族

原さんが経営するドッグサロン『アネラ』。ハワイ語で天使の意味です。

 

「私にとって、銀次郎もラブも天使のような存在です。

 

若いときもすごくかわいかったですけど、すべてがゆっくりペースになったシニアは、赤ちゃんを見ているような感じで存在が愛おしくて」。

 

先住犬のラブちゃんが旅立ってから8年。

 

「もっとたくさん触れ合って、いろいろお話したかったなぁ、ごめんね…って言い続けてきたんですけど、今はやっとありがとうと言えるようになりました」と、8年の長い年月を経て、気持ちも前向きに変化しました。

 

「犬のことを勉強するのは、ラブからの宿題だと思ってます」。

 

今はラブちゃんにできなかった分も、銀次郎くんをしっかりケアしてあげているそうです。

レトの遺影

 

原さんがセラピストに転職する前は、ご夫婦それぞれがお仕事に、子どもたちは部活動にと忙しく、銀次郎くんは長いお留守番の日々でした。

 

「今は私に時間の余裕ができ、やっと一緒にいろんなところに行ける…。

 

そう思ったとたんシニアになってしまって。今は1分1秒、一緒に過ごす時間を大事にしたいなぁと思います」。

ダックスと家族

 

そんな原さんの今の目標はやはり、20歳を迎えること!

 

「成人式はドッグカフェを貸し切ってお誕生日パーティーをしたいです! お友達に“盛大にお祝いするから、みんな来てね!”って言ってるんですよ(笑)」。

 

シニアになってからは「愛しさと渋さが増してダンディなんです」目を細める原さん。

 

銀次郎くんが長寿なのはきっと、ママによるマッサージや温灸ケアが奏功しているのはもちろん、ドッグマッサージセラピストになってしまうほど愛犬の健康に向き合ってきた原さんの、深い愛情あってのことでしょう。

 

ダックスと家族

 

取材・文/都丸優子

 

★「#レジェンドダックス」で投稿お待ちしています!

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