【椎間板ヘルニア】ダックスフンドが発症しやすい「ハンセンⅠ型」〜症状や予防法、グレードなど〜
はじめに
椎間板ヘルニアは、脊髄神経の圧迫の仕方で、ハンセンⅠ型とハンセンⅡ型の2つに分類されます。
ハンセンⅠ型は、ミニチュアダックスフンドをはじめ、ビーグル、コッカースパニエルといった犬種に多発します。
これらの犬種は「軟骨異栄養犬種」とも言われ、生まれつき軟骨の変性を起こしやすいのです。
1歳を越えた頃から椎間板物質に変性が始まるため発症リスクが高く、2歳から7歳の若い頃に急性に発症します。
ハンセンⅡ型は加齢に伴って起こることが多く、慢性進行性で麻痺が進行していきます。
今回は、ダックスフンドに発症しやすい、「ハンセンⅠ型の椎間板ヘルニア」についてご紹介いたします。
症状
ハンセンⅠ型の椎間板ヘルニアは急性に発症します。
突然抱っこを嫌がったり、抱き上げたときに「キャンッ」と大きな声を出す。
普段平気で登っている段差を嫌がる、散歩をいやがる、震えていて不安げである、腰を左右に振ってヨタヨタ歩くなどといった症状が認められます。
原因
ミニチュアダックスフンドは「軟骨異栄養犬種」とも言われ、生まれつき軟骨の変性を起こしやすく、1歳頃から椎間板の中の髄核と言われる物質に変性が始まります。
髄核は骨と骨の間に存在する物質で、主に外部からの衝撃などを吸収するもので子犬のときは9割が水分でできているゼリー状のもの。
それが軟骨異栄養犬種では、1歳を過ぎた頃から髄核の水分を失いはじめ、髄核は柔軟性を失っていくのです。
硬く変性した髄核は、髄核を覆っている線維輪を破り、上行する脊髄神経を圧迫し痛みや麻痺を発症します。
このため、2歳から7歳の若い頃にハンセンⅠ型の椎間板ヘルニアは急性に発症します。
飛び出した髄核(椎間板物質)は時間経過とともに吸収され、自然治癒することがあります。
上述するように、ハンセンⅠ型は状態によっては自然治癒可能な疾患なのです。
診断・治療
椎間板ヘルニアは首や背中の痛み、両側性の麻痺、発症年齢、犬種などからある程度推測可能です。
しかし、同じように首や背中に痛みを発するものとして、骨折や、脊髄内での梗塞、出血なども挙げられます。
レントゲン検査では、椎間板ヘルニアを確定診断することはできませんが、骨折などを除外することができます。
椎間板ヘルニアの診断、程度の判断などはMRI検査によって行われます。
また、さきほど述べたように、ハンセンⅠ型の椎間板ヘルニアは病状の程度によっては治癒します。
重症度の評価にはグレード1〜5が用いられます。
重症度 | 症状 | 適性治療による改善率 |
グレード1 | 疼痛 | 内科治療 約90%
外科治療 約90%以上 |
グレード2 | 歩行可能、やや麻痺 | 内科治療 約90%
外科治療 約90%以上 |
グレード3 | 歩行不能、やや麻痺〜完全麻痺 | 内科治療 約50%
外科治療 約90%以上 |
グレード4 | 歩行不能、完全麻痺、自力排尿不可 | 内科治療 約50%
外科治療 約90%以上 |
グレード5 | 歩行不能、完全麻痺、自力排尿不可
深部痛覚なし |
12時間以内 約50%
36時間以内 約40% 48時間以内 約25% |
表からもわかるように、ハンセンⅠ型はグレードが低い場合には適切な対応によって改善可能。
適切な対応とは、絶対安静です。自宅での絶対安静が難しい場合、入院も非常に有効な対応です。
何度も述べるように、ハンセンⅠ型は悪化させなければ、自然治癒可能な疾患。
一方でグレードが高い症例や改善が認められない子に関しては、時に早急な外科的対応をしなければ、一生歩けなくなってしまう疾患です。
予防
椎間板ヘルニアを予防するには、からだに負担をかけすぎないことは重要です。
◆過度な運動はしない
お散歩や運動が大好きなダックスフンドですが、ジャンプをさせたり何度もダッシュをさせるなど過度な運動はひかえるようにしましょう。
階段や坂道はゆっくりと飼い主さんとペースを合わせて歩くようにすると良いでしょう。
◆階段・ソファからのジャンプは避ける
ゆっくりとした段差の上り下りは背骨の柔軟性を保つのにとても良いのですが、ジャンプしたり飛び降りたりすると、急な衝撃が背骨に加わり、からだに大きな負担を与えます。階段には柵をつくって勝手にのぼらせないようにする、ソファにはサイドステアーをつけるなど工夫をしましょう。
◆太らせない
肥満は骨や関節などさまざまな部位に負担をかけます。それだけでなく、糖尿病など危険な病気を発症することもあるので太らせないように心がけましょう。フレンチブルドッグは食欲旺盛な犬種です。フードは低脂肪・高タンパクのもの、おやつの回数を減らす(あげるときは低カロリーのものにする)など、きちんと体重管理をしてあげましょう。
おわりに
ダックスフンドの椎間板ヘルニアは、遺伝によるところが大きいといわれています。
ブリーダーさんによっては、椎間板ヘルニアを発症していない血統を積極的にブリーディングしていますが、中にはそういった点に配慮せずに繁殖を行うこともるので十分注意が必要です。
犬を迎え入れる時は、できるだけ血統がわかっていて、両親、祖父母ともに椎間板ヘルニアの発症歴がない血筋をブリーダーさんから直接迎え入れることをオススメします。
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