【取材】数々の病気を乗り越えた18歳!不死鳥「ティアラ」を支えるのは徹底した温度管理と記録ノート
12歳を超えても元気なダックスを、憧れと敬意を込めて“レジェンドダックス”と呼ぶことに決定! その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドダックスの肖像』です。今回登場するのは、18歳のティアラちゃん。脳梗塞をはじめ、数々の病気と闘ってきた不死鳥のような女の子です。奇跡の復活劇を起こすことができたのは、家族の力強いサポートがあったからこそでした。
ティアラちゃんプロフィール
年齢&性別
18歳の女の子
体重
3.9kg(MAX 6.5kg!)
大好きなこと
食べること(今はスイカ命)、遊び、散歩
既往歴
・4歳で椎間板ヘルニア。
・16歳で眼の損傷、腎臓病、脳梗塞。
・17歳で尿毒症、歯周病、2度目の脳梗塞。
放っておけない女の子
出会いはオーナーの小林さんが高校生の頃。通学路のサロンにいた、行き遅れて7カ月になっていた女の子が放っておけなくなり、妹さんとお年玉や図書カードまで出し合って小林家に迎えました。
「ティアラは、散歩しててもグイグイ引っ張ったり、他の犬に吠えてしまうような聞かん坊で、犬の友だちはほとんどいませんでした。
でも人は大好きです。特に男の人(笑)。自分のことを可愛いと思っているようで、 “可愛い”と言われると上目遣いで見上げたり、男性のお客さんが来たらサッと膝の上に乗って甘えたり。
女の子らしくて強かだなと驚きましたが、先住犬のランディの夜鳴きを怖がって、精神安定剤を処方されるような一面もありました」(小林さん=以下「」内同)。
ご家族の愛情を受け、病気もなく元気に育ったティアラちゃん。でもちょっと育ち過ぎて、4歳で体重が6.5kgまで増え、腰のヘルニアになってしまいます。
「2週間ほど入院して超音波治療をしてもらい、後は痛み止めと食事療法でよくなっていきました。
食事は病院で相談し、『ロイヤルカナン』の減量用にしました。3.5kgまで落として、その後もだいたいキープできています」。
入院は1週間の予定でしたが、先生が“もう少しで治るから治したい”と、無償で2週間に延長してくれたそう。
良い先生ではありましたが、この十数年後、19歳になったランディくんの治療を巡って袂を分かつことになります。
新たなかかりつけ医との出会い
かなりのベテランだったかかりつけ医の先生。食欲不振のランディくんについて相談したところ、高齢なので治療よりも最期に好きなものを食べさせることを提案されたそう。
「私たちにとっては、高齢だろうと大事なランディですし、何より生きようとしていました。
そこで、セカンドオピニオンをもらえる病院を探すことにしたんです。色々調べて、地域の情報誌に載っていた、新しくできた病院に行ってみることにしました。
そこの先生は同じ地域の病院から独立された方で、前の病院からの患者さんも多くて大人気でした。
ここでは、高齢だからと諦めることなく、できることをすべて試してもらえるとのことだったので、ランディはもちろん、ティアラもこちらでお世話になることにしました」。
ランディくんは19歳で亡くなってしまいましたが、最期まで最善を尽くしてもらうことができました。
そして、この後いくつもの病気と闘うことになるティアラちゃんにとっても、この先生と出会えたことは幸運でした。
試練のはじまり
4歳のヘルニア以降はずっと健康だったティアラちゃんですが、16歳を迎えた途端、次々とケガや病気に見舞われてしまいます。
「16歳になった頃、左眼に深めの傷ができてしまいました。エリザベスカラーと点眼で治療したのですが、点眼薬は5種類ありました。
ドライアイ用の『ムコスタ』、抗生剤の『タリビット』、角膜障害用の『パピテイン』、抗炎症薬の『ティアローズ』、それから血清点眼(犬自身の血清から作る、涙に近い成分の点眼薬)です。
血清点眼は作るのが少し大変なので、症状が落ち着いてからは、血清点眼以外の薬を状況に応じて使っています。
次は腎臓でした。数値がかなり悪化し、自宅で皮下点滴を始めました。3日に1回180ccを今でも続けています。
私が前から押さえ、父が横に付き、母が針を刺すという3人がかりでやるのですが、ティアラは暴れるしこちらも余裕がないしで大変でした。
少し慣れたかなと思えたのはごく最近です。朝一番の寝起きにおやつで釣りながらやるのが、今のところ一番良いようです」。
一難去ってまた一難という感じですが、この時はまだ試練の入口でした。
はじめての脳梗塞
16歳で3度目となる試練は、脳梗塞。ティアラちゃんに命の危機が迫ります。
「夜中の2時頃でした。一緒に寝ていた私の肩をカシカシ掻くので振り向くと、そのままパタッと倒れたんです。目は時々開けるのですが起きはせず、熱もありました。
普段は嫌いな抱っこもされるがままでしたし、後から思えば異常なことが多かったので、すぐ救急病院に行くべきでした。でもその時は判断を迷い、朝まで待ってしまいました。
かかりつけ医に連れていくと、まず血液採取、それから点滴をして酸素室に入れられ、夕方には脳梗塞の診断が出ました。
危険な状況でしたが、先生が“犬の脳梗塞は、峠を越えれば一旦は落ち着くことが多いから頑張ろう”と励ましてくれ、心強かったのを憶えています。
酸素室に8時間入った後、家に連れて帰って寝かせました。それを3日間繰り返して、何とか状態が落ち着きました。
その後は服薬で安定し、痛み止めや血液をサラサラにするものなど、今も7種類の薬を飲み続けています」。
難しい対応を迫られましたが、ティアラちゃんが自分で小林さんに異常を訴え、朝一番に病院に連れて行けたことで、一命を取り留めることができました。
また、かかりつけ医の的確で素早い診断と処置も、ティアラちゃんを救ってくれました。
次々に訪れる試練
試練続きの16歳でしたが、これで終わりではありません。
「脳梗塞から半年後くらいに、炎症マーカーが急上昇しました。どの臓器か調べるにはMRI検査が必要だったのですが、年齢的なリスクを考え検査はしませんでした。
疑われたのは膵臓、腎臓、肝臓でしたが、ごはんは食べられていたので、膵臓ではなさそうでした。
治療は、8時間の酸素室を2日間と、あとは疼痛を抑える薬を出してもらって自宅療養です」。
16歳の試練はこれでやっと終わりました。ですが、1年程経った17歳の3月、今度は腎不全から尿毒症になってしまいます。
またも危険な状態に陥ったものの、3日間の入院と点滴で回復。事なきを得ました。
この時は膵臓も悪くなってごはんを食べなくなり、シリンジによる強制給餌も行ないました。
次々と押し寄せる試練の波を、ティアラちゃんは何とか乗り越えていきます。
脳梗塞ふたたび
次は17歳の5月でした。歯周病で出た膿で、辛い鼻詰まりの症状に悩まされます。
「もし麻酔が大丈夫な若い子だったら、15分の手術で治る病気でした。でも高齢だとリスクが高いため、薬で治療してもらうことにしました。
ところが普通の膿止めの薬が効かず、どうしようかと思いましたが、先生が膿を分析して合う薬を探してくれたんです。それで膿はピタッと止まりました。
治って安心したのと同時に、若い時にもっと歯磨きをしておけば良かったという後悔もありました。当時は3頭いたので、今ほどしっかりは見てあげられなくて」。
病気の予防だけでなく、健康な歯でしっかり食べるためにも、口腔ケアは若いうちから頑張ってあげたいですね。
そして翌6月、最後の大波がやってきます。2度目の脳梗塞でした。
「症状も治療も、1回目とほぼ同じでした。この時は先生が家庭用の酸素室のことを教えてくれて、すぐにレンタルを申し込みました。
とにかく早く欲しかったので、配送が待てず、業者さんのところまで車で取りに行きました。費用は月に3万円弱で、治療期間は2カ月でした。
それで治療はできていたのですが、それだけでは居ても立ってもいられなくて、“おいぬ様”が祀ってある青梅の御嶽神社で祈祷してもらいました。
すると、その時からすごく元気になってくれたんです! もちろんティアラ自身の力だとは思いますが…」。
どれだけ手を尽くしても、まだ何かせずにはいられない。それだけの想いで看病されたことは、間違いなくティアラちゃんの回復に繋がったと思います。
ごはん、温度、記録ノート
数々の試練を乗り越え、堂々のレジェンドに辿り着いたティアラちゃん。その身体を支えてきた、食事やシニア期の工夫について伺いました。
「フードは『ロイヤルカナン』で、ずっとドライフードでしたが、今は食べやすいウェットフードにして、冷凍のミンチ肉もトッピングしています。
ウェットは『ロイヤルカナン セレクトプロテイン チキン&ライス』、冷凍ミンチは『帝塚山ハウンドカム』の腎臓ケア用の鶏ミンチです。
ウェットやお肉はサイコロ状にして焼いています。するといい匂いも出て食い付きが良く、逆にあっという間に食べてしまうのが心配なので、少しずつあげています。
以前はササミや豆腐、キュウリにブロッコリーパウダーなど、良いと言われているものを色々あげていました。
ですが16歳で腎臓を悪くしてから、かかりつけ医のOKが出たものだけにしました。その後も、食事については先生に言われたことを忠実に守っています」。
食事以外にも、先生とのやり取りからこんなシニア&病気対策が生まれました。
「まず温度です。脳梗塞のとき、昼に出歩いたか、室温はどれくらいだったかと色々聞かれ、そんなに大事だったのかと改めて気付かされました。
家でも外でも暑過ぎないようにくらいは気を付けていましたが、それからは室温を夏なら26〜28℃に保つなど、家族で徹底して管理するようになりました。
先生曰く“シニアは温度!”だそうです。
それから記録ノートも。ごはん、ウンチ、飲んだ薬、一日の様子などを記録し、診察のときにはっきり答えられるようにしています。あやふやだと適切な処置も難しいと思うので」。
小林家では、記録ノートは真剣勝負。つけ忘れや間違いで親子ゲンカに発展することもあるとか。ランディくんの頃から毎日続け、今では6冊を超えています。
シニア対策
そしてもちろん、ご自身で工夫されているシニア対策もあります。
「ティアラの居場所は、目をケガしたこともあって角を全部クッションで囲んでます。
そこにランディ用だった低反発マットも敷いているので、子どものプレイルームみたいになっています。
それからフローリングには、滑り止めのパネルマットや100均の洗える薄いカーペットを敷き、キッチンやダイニングは誤食防止のため入ってこられないようにしています。
誤食といえば、誤飲も怖いので、食事中はずっと目を離さないようにしています。
あと、トイレと水の場所を変えないことも。目はあまり見えてないのですが、場所を憶えているので、オムツをしなくても粗相は全然ありません。
もう一つ、シニアというか病気の対策かもしれませんが、血液検査の結果をファイリングして、いつでも持ち出せるようにしています」。
日々の記録ノートに加え、血液検査ファイルまであれば、夜間や旅先など、かかりつけ医以外の病院でも素早く正確に愛犬の状況を伝えられますね。
秘訣は“楽しみ”
激動の犬生を歩んできたティアラちゃんと小林さんですが、長寿の秘訣はとてもシンプルなものでした。
「やっぱり“楽しみ”だと思います。今でいうとスイカが本当に大好きで、もはや生き甲斐になっています。
腎臓のために食事制限していて、最近1年振りくらいにあげたんですけど、目がバキバキに見開くというか、本当に嬉しそうに大興奮してました。
もう季節的にスイカが少ないので、これからどう調達するかが最近の悩みです(笑)。
それから、外に出ることも。夏の暑さを避け、9月に久し振りに外に出てみた時なんて、この子走り出したんですよ!
楽しいから元気になれるし、元気だからこそ楽しめる。そういう楽しみを一緒に見つけてあげることが大事なのかなと思います。
歳を取り、できることが減っていく中でも、工夫次第で楽しくできることはいっぱいありますよね」。
元気の素にも、バロメーターにもなる“楽しみ”。犬にも人にも、生きていく上で欠かせません。
側にいるだけでたくさんの楽しみを与えてくれる犬たちに、恩返しならぬ“楽しみ返し”をして、いつまでも元気でいてもらいたいですね。
取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)
★「#レジェンドダックス」で投稿お待ちしています!
ダックスフンドライフでは、取材にご協力頂けるレジェンドダックスを探しております!
12歳を超えたダックスたちは、「#レジェンドダックス」をつけてInstagramに投稿してみてくださいね。
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