2022年1月22日3,575 ビュー View

【取材】生後すぐに生死の境をさまよった「メルモーニ」。数々の病気と闘いながら19歳目前に!

12歳を超えても元気なダックスを、憧れと敬意を込めて“レジェンドダックス”と呼ぶことに決定! その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドダックスの肖像』です。今回は、生後3ヶ月で致死率の高いパルボウイルスにかかったという、壮絶なパピー期を経験し、ママとの運命的な出会いを果たしたメルモーニちゃんを取材しました。現在は腫瘍と闘いながらも19歳目前となるスーパーレジェンド、その長寿の秘訣は献身的な愛でした。

メルモーニちゃんプロフィール

 

年齢&性別

18歳10か月の女の子(2003年3月28日生まれ)

体重

4.3kg(若い頃は4.8kg)

性格

昔はおてんば気が強かったが、今はおっとり。

既往症

・生後3か月でパルボウイルスに感染するも回復。

・14歳で前庭疾患を発症、首が傾くが、投薬によって2か月ほどで治癒。現在までに後遺症&再発ナシ。

・17歳で白内障により全盲に。

・18歳で肺腫瘍、膀胱ポリーブが見つかる。現在も膀胱ポリープが原因の血尿が続いているが、鉄剤を摂取して貧血を予防中。

 

パルボウイルスで生死の境をさまよったメルモーニちゃんとの出会い

ダックス

 

メルモーニちゃんとオーナーさんの出会いは、ちょっと特別なものでした。今から18年前のことです。

 

「メル(メルモーニちゃんの愛称)は、もともと私の知り合いのペットショップで売られていた子だったんです。

 

でも、赤ちゃんのころにブリーダーの犬舎でパルボウイルス感染症という病気にかかってしまって、毛は抜けて、体はガリガリ。

 

とても売れるような状態ではなかったんです。だからといって、そこのペットショップのオーナーさんはブリーダーに戻すことはせず、知り合いで飼ってくれる人を探す方だったので、私のところに話が来て、譲り受けたんです。

 

誰も引き取り手がいない場合は、ブリーダーに戻して繁殖犬にさせられるかも…なんて話を聞いちゃうと、“やっぱり引き取るしかない”って感じでした」(メルモーニママ=以下「」内同)」

 

“パルボウイルス感染症”といえば、ワクチン接種前の子犬がかかりやすく、全身性疾患から敗血症などを引き起こす、非常に致死率が高い病気。

 

専用の抗ウイルス剤がないため、重度の胃腸炎、嘔吐、脱水などの症状に応じた対症療法を行うしかないと言われています。

 

メルモーニちゃんは点滴による対処療法で奇跡的に命をつなぐことができました。

 

メルモーニちゃんママの元へやって来たのは、治療が済んで「もう大丈夫」という状態になった生後3か月過ぎでしたが、それでも「毛はバッサバサで、体もゲッソリ」だったそう。

 

当時すでに3頭のダックスを多頭飼いしていて犬を飼うことには慣れていたママさんでも、生死に関わる病を患った子を迎え入れるのは相当な覚悟が必要でした。

 

盲ろうでも自分でトイレへ行くスーパーレジェンド!

ダックス

 

「この子は体が弱い子だろう」と覚悟していたママさんでしたが、予想に反して、14歳まで大きな病気をせず、元気に育ちました。

 

「飼っていた子たちの中でも一番強かったかもしれないですね。

 

ほかの子たちはヘルニアで手術したりもしたんですけど、この子は全然。すごく丈夫でした。

 

性格も、昔はトレーナーさんをつけたくらい暴れん坊。

 

うちにいた4頭の中では末っ子だったのに自分が一番上だと思っていたみたいで、私がごはんをあげようとすると、お兄ちゃんやお姉ちゃんを押しのけて“私が先!ガブ!”って感じだったんですよ。

 

あとは、お散歩中に大型犬に向かってワンワン吠えて向かって行ったりもしてました」

 

ダックス

 

それだけおてんばだったメルモーニちゃんですが、17歳で全盲になると性格が一変、急に大人しくなったそう。

 

「抱っこが好きなのはもともとなんですけど、目が見えなくなってからはより一層ですね。

 

じつはもう耳も聞こえないのでやっぱり不安になるみたいで、つねに私を探していて“抱っこ、抱っこ”ってせがんできます」

 

メルモーニちゃんにとってオーナーさんはまさに“ママ”。音も光も感じられない日常の中でママのぬくもりが唯一の癒しになっているのは納得です。

 

驚きなのが、目が見えなくてもメルモーニちゃんは家の中で、自分ひとりでトイレまで行って用を足せること。

 

「場所をわかっているので、見えなくても自分でスタスタとトイレまで行っています」

 

今でもオムツには頼っていません。18歳10か月という年齢を考えても、これはすごいことです!

 

次々に襲いかかる病

ダックス

18歳になってまもなく、メルモーニちゃんの体に大きな変化が…。

 

「血尿がすごくて、年に1度やってる血液検査をした時に“たぶん膀胱炎だろう”と抗生剤を飲むことに。

 

なのに一向に血尿が治らないので、レントゲンとエコーもやってもらったんです。

 

そうしたら、膀胱にポリープ、肺には腫瘍が見つかって。

 

高齢なので全身麻酔を必要とする検査はできず、良性か悪性かの確定診断はできなかったんですが、統計的に“この場所にできる腫瘍はガンかな”と、最初の病院では余命半年を宣告されました」

 

ママさんは免疫療法を望んだものの、その病院では「抗がん剤かステロイド投与しかできない」と言われ、セカンドオピニオンのために今の病院へ。

 

そこで免疫療法をスタートさせました。しかし、現在は加齢により腎臓、肝臓、胆泥症と内臓全体が弱っているそうで、心配は尽きません。

 

「これだけ長く生きてくれているので、これは仕方ないことだと思っています。逆に何もないほうがおかしいと思って」

 

ママさんが言う「仕方ない」は、決してあきらめの言葉ではありません。

 

外科的な治療ができない代わりに、積極的に免疫治療や食事管理、症状緩和のための対策をされていて、それは私たちも驚くほどのきめ細かやかさなのです。

 

目標は体重キープ。食事療法は試行錯誤の毎日

ダックス

 

まずは、食事について。胃腸がちょっと弱く、食べ慣れたドライフード以外のものを与えると下痢をしてしまうため、獣医師のすすめもあり、これまで食事はドライフードのみでした(成長に合わせて切り替え)。

 

「もともとごはんをしっかり食べる子でしたが、シニアになってから腎臓の数値が悪くなったせいか、ごはんの選り好みが激しくなって…。今は全然食べてくれないんです。

 

獣医さんに相談したら、“もう食べてくれるならなんでもいい”と。それで今はネコ用のドライフードをメインで食べさせています」

 

そもそも雑食性の犬と、肉食動物であるネコでは必須栄養素が違います。

 

そのため、それぞれのフードに含まれている栄養素の配分が違うのですが、“生きるための栄養&エネルギー摂取”として考えれば、“食べてくれるものを与える”という選択も間違いとは言えません。

 

「キャットフードのほうが香りづけが強いみたいで、食いつきはいいです。

 

それでも食欲にムラはあって、食べない時はまったく食べない。

 

だから、食べたい時に食べられるように、ごはんは置いたままにしています。

 

そうすると、夜中トイレに行ったついでにパクパク半分くらい食べてくれてたりもするんです」

 

ダックス

 

今では下痢をすることもなくなったため、鶏ムネ肉のひき肉、ブリカマ、サーモン、サツマイモ、カボチャ、ニンジン、ブロッコリーの茹でこぼしなどを与えることも。

 

「本当にビックリするくらい毎食食べてくれるものが違うので、その都度6種類くらい混ぜてあげたり、単品であげたり、いろいろ試しています。

 

その準備のために私はずっとキッチンにいる感じ(笑)」

 

ほかにも冷凍で届く犬用手作り惣菜(ハウンドカム食堂)を取り寄せるなど、メルモーニちゃんの食事管理のために尽くした手は数知れず…。

 

「今はとにかく、体重を減らさないことを一番に考えています。

 

ただ、腎臓や肝臓、腫瘍にとってダメなものもあるのでちょっと大変です。

 

たとえば、ガンは糖分を栄養に成長してしまうらしいので糖分は控えていたり。

 

あげられるものの塩梅を考えるのが難しいですね」

 

頼みの綱は免疫療法。万が一に備えての対策も!

サプリ,栄養食品

 

食事管理と並行して昨年の8月からは免疫療法も行っています。

 

腎臓疾患へのアプローチとしては『腎パワー元気』、『カリーナコンボ』を、腫瘍抑制&免疫力アップのためには『イペットS』、『センダンα』、『ソフィムニィN-163』、『マグロの健康オメガ3オイル』、『コルディM』『紅豆杉茶』などのサプリメントを摂取。

 

それに加えて、週に2回は免疫力をあげる注射・アンサー20も打っています。

 

「ソフィムニィN-163はもともと人間用で、ガン患者の方が飲んだりするもの。

 

低リン牛乳や『ロイヤルカナン腎臓用リキッド』ににほかのサプリメントと一緒に混ぜ、“免疫力アップドリンク”として毎朝メルに飲ませてます。

 

液体なので、シリンジで飲ませてますが、結構喜んで飲んでくれます」

 

そんな細やかな食事療法&免疫療法のおかげで、メルモーニちゃんは体重をキープ。

 

肺にできた腫瘍もサイズの変化はナシで、進行は抑えられているそうです。

 

人間用の遠赤外線温熱器でメルモーニちゃんの体を温めて、血流をよくして免疫力を上げる方法も功を奏しているのかもしれません(※人間用の温熱器は高温になるためヘッドに布を巻いて使用)。

 

ダックス

 

「獣医さん的には、免疫治療でなるべく腫瘍が小さくなって欲しかったみたいなんですけど、悪化していないということだけでもありがたいです。今は呼吸も落ち着いていて、調子はいいです」

 

ちなみに、肺に腫瘍があるメルモーニちゃんは気圧の変動によって呼吸が荒くなってしまうこともあるため、ママさんは気圧の変動をお知らせしてくれるアプリをスマホに入れているそう。

 

そのうえ、呼吸が荒くなってしまった時用に、自宅には酸素ハウスも常備!

 

ダックス

 

「酸素マシーンとメルの体のサイズにあったハウスをレンタルしているんです。

 

最近は呼吸が落ち着いているのであまり入ることはないんですが、一時は小型犬なのに1分間の呼吸数が40を超えてしまうことがあって(※通常は25回前後)、その時はよく入れていました」

 

メルモーニちゃんの闘病に何が役立つのかは、獣医さんのアドバイスはもちろん、ネットで調べたり、SNSで実際に愛犬の看護に当たられた方の生の声を参考にしているそう。

 

この細やかで手厚い看護には、本当に脱帽です。

 

後悔のない看護をするために…

ダックスと家族

 

メルモーニちゃんのためにできることはすべてやってあげている印象のママさんですが、中でも一番「やってよかった!」と思っていることがあります。それが、仕事を辞めたこと。

 

「メルが17歳6か月の時に仕事を辞めました。

 

これまでの子は、仕事が忙しくて異変に気づけなかったり、最期を看取れなかったりで、100%お世話できなかったことを後悔していて。

 

せめて最後に残ったメルだけは全力でお世話したかったんです。

 

私が家にいる時は安心して寝てくれるし、抱っこして落ち着かせたり、外の風に当たらせる回数を多くして、ストレスフリーな生活を送らせてあげれています。

 

手間がかかる食事の準備だって、ちっとも苦じゃない。

 

これが仕事をしていて 朝早く起きなきゃいけないなら、ここまでしてあげられていたか…。

 

夜中に苦しそうにしててもそれに気づけない、なんてこともありえたと思うんです」

 

ダックスと家族

 

昨年6月に“余命半年”と宣告された期間はすでに半年以上超えました。

 

取材後、肺の腫瘍が少し大きくなってしまった…とのことで大変心配ですが、パルボウイルスにも打ち勝ったメルモーニちゃんです。その強い生命力でまだまだ長生きして、少しでも長くママと一緒にいられますように!

 

取材・文/永野ゆかり

 

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