2021年1月12日11,471 ビュー View

【取材】20歳9ヶ月の「怪物犬」クロちゃん。ささいな変化を見逃さない愛とユーモアに包まれて

12歳を超えても元気なダックスを、憧れと敬意を込めて“レジェンドダックス”と呼ぶことに決定! その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドダックスの肖像』です。記念すべき第一回目は、埼玉県で訪問介護事業を営む堀部宝利さん、沙希子さんご夫妻とともに暮らす20歳のミニチュアダックスのクロちゃん。「目指せ成人式!」と願ってみても、実際にそれを叶えたご家族に出会えることはそうありません。果たして20歳のクロちゃんとご家族はどのような生活を送られているのでしょうか。そして「超」長寿の秘訣とは?

レジェンドダックス

クロちゃんプロフィール

ダックス

 

年齢&性別

20歳9ヶ月の男の子※ 2021年1月時点(2000年4月1日生まれ)

体重

3.7キロ

大好きなこと

毛布、若い頃はドライブ、走ること

既往歴

・5歳(2005年12月9日)で 腸閉塞に。入院、緊急オペ

・10歳(2010年5月3日 )で椎間板ヘルニア1度目

・11歳(2011年5月30日)で2度めの椎間板ヘルニア(1度目より少し強い)

・12歳(2012年6月)でコレステロール値が高めのため、ロイヤルカナン消化器サポート低脂肪食を開始。またこの年の6月17日に3度め、グレードⅡの椎間板ヘルニアに。絶対安静のため、つきっきりで2週間キャリーバック内生活し回復。

・20歳(2020年10月)口角左下に出血を伴うメラノーマ出現。経過観察中。

また、同年11月3日に1度目、12月20日に2度目の痙攣。これより内服薬を開始 

 

獣医さんに「怪物犬」と言われた奇跡の20歳

ダックスと家族

20歳のクロちゃんと堀部さんご夫妻

 

20歳のダックス・クロちゃん。そう聞いて、実際に取材で会うまで、想像していたのは寝たきりの介護状態でした。

 

失礼ながら20歳となればそれも当たり前だと思っていました。

 

しかしそんな予想は大外れ。なんとクロちゃんは自力で立って歩き回っていたのです。

 

目は見えなくなっているものの、とにかく足腰が強い!

 

しっかり安全対策を施されたクロちゃん専用のお部屋で自由に歩き、水を飲み、悠々自適の生活です。

 

「2020年10月の健康診断の結果を見て獣医さんに“怪物犬”と言われました。20年間数値が変わっていないんですからびっくりですよね(笑)」と語るのは、ママの沙希子さん。

 

ダックス

獣医さん認定の「怪物犬」

 

これまで全く病気をしてこなかったわけではありません。若い頃には腸閉塞も経験しています。

 

また、シニアになってからはダックスに多いヘルニアも発症。最近では口の中にメラノーマが出来、痙攣も経験しています。

 

しかしどれも進行が遅かったり止まったりしているというから驚き。

 

これはクロちゃんが持っている“そもそもの強さ”だと思わずにはいられません。身体も心も運も強い!

 

やはり“怪物犬”です。

 

しかしクロちゃんが元気な理由は、もともとのポテンシャルだけではありません。

 

クロちゃんのための記録ノート

体調記録用ノート

小さな文字でびっしりと記録されている

 

驚きだけでなく感動すらおぼえたのは、クロちゃんのための記録ノートを拝見した時でした。

 

何冊もなるノートにはクロちゃんの病気のこと、病院で話したこと、他にもびっしりと様々な記録がされています。

 

この詳細なノートが、クロちゃんの健康を守っていることは間違いありません。

 

ママさんに「それはいつ頃からですか?」などと質問すると、すぐにノートを見て「○年○月○日ですね、この時は…」と回答が返ってきます。

 

クロちゃんの全てを見逃すことがないように、獣医さんとのやり取りも書き逃すことのないようにという気持ちが伝わってくる宝物のノートです。

 

クロちゃんとの思い出は全て取っておく。真剣だけれどそこにはユーモアもありました。

 

「先生の書いてくれた説明がこれなのですが(と言って先生のイラスト入りメモを見せてくれる)、個性が強くて全然わからない。

 

謎すぎですが思い出としてとってあるんです(笑)」。(沙希子さん)

 

マイペースで構われるのが嫌いなクロちゃん&つい構ってしまう二人

ダックス

自分で歩き回れる20歳!
周囲にはぶつかっても良いように柔らかな緩衝材のようなものが置かれている

 

クロちゃんの性格に聞いてみるとご夫婦揃って口にしたのは「マイペース」。これはご長寿犬の取材でよく耳にすることです。

 

自分のペースを守ることがストレスのない生活につながり、結果的に健康維持の秘訣となっているのかもしれません。

 

「若い頃からしつこくされるのが嫌いです」。(沙希子さん)

 

「人も犬も大好きで社会性はあります。でも媚びることはない」。(宝利さん)

 

誰にもベタベタしないし、されるもの嫌いだそう。それを知りながらついベタベタしてしまうお二人。

 

クロちゃんが若かった頃は、怒りに触れて噛まれるという経験を何度かしています。

 

「好きすぎて二人とも構いすぎちゃうんです。それで嫌がって噛むんですけれど、私は唇が腫れるほど噛まれていますし、夫も同じです」。(沙希子さん)

 

「僕はテレビを一緒に見ていて、そんなクロが可愛すぎて背中をつい噛んだら、“何すんだ!”って本気噛みされました。

 

この子もすぐに我に返りましたけれど、牙入りました(笑)」。(宝利さん)

ダックス

愛おしくてたまらない

 

嫌がるのがわかっていても抑えきれない愛情。

 

それにしても背中を噛むとは…なかなかユニークな愛情表現ですが、理解できなくもありません。

 

「目の中に入れても痛くないほど可愛い」というのと同じですよね、きっと。

 

大らかさと繊細さのバランスが絶妙なご夫婦の元で

ダックス

バランスが良いってこういうことかも

 

ご主人の宝利さんはとても明るくて大らかな性格、そしてマイペース。クロちゃんと似ているのかもしれないです(ご本人にそういう意識はないと思いますが)。

 

奥様の沙希子さんもとても明るく楽しい方ですが、とにかく細かいことに目が行き届く繊細な神経の持ち主。

 

「私は極度の心配性なので、とにかく少しでも何か心配があればすぐに病院へ行きます。気づきが大事だと思っていますので」。(沙希子さん)

 

それに対してご主人はのんびり構える派。「病院に行くのが面倒で(笑)」。(宝利さん)

 

そんなふうに言いながらも、昔の写真をスマホでたくさん見せてくださるのですから、クロちゃんが可愛くて仕方ないご主人。

 

甘噛みしてクロちゃんに反撃されるほど好きでたまらないのです。

スマホ

スマホの中にはクロちゃんの写真がいっぱい

 

そう、心配していないわけではありません。対処の仕方が違うだけ。

 

そしてその違いがとても良いバランスになっている堀部家です。

 

クロちゃんが自由に伸び伸びと暮らせるのもこのバランスがなせる技なのではないでしょうか。

 

細やかな室温調整とベッドメイキング

ダックスと家族

常に大切そうにクロちゃんを抱きしめていたママさん

 

マイペースなクロちゃんは、こだわりも強いとのこと。“自分”というものがしっかりあるのですね。

 

その中でも大好きな毛布へのこだわりは相当なもの。

 

「もこもこしている毛布が大好きで、コレクションしています」。(沙希子さん)

 

もちろんクロちゃんが自分で買ってきて並べるわけではありません。沙希子さんがあれこれ考えクロちゃんの好きだと思うものを選んでいるのです。

クロちゃん毛布コレクション

クロちゃん毛布コレクション

 

「ベットメイキングには特にうるさいですね。薄手と厚手を重ね合わせ、寄りかかる場所も作らないとダメです。きちんとセットしないとお気に召さない(笑)。

 

合格のベットメイキングであればスッと寝てくれます」。(沙希子さん)

 

実はベッドメイキングはお気に入りの一通りだけでなく、季節によって変化します。

 

「春夏秋冬の寝具スタイルとでも言いましょうか、季節によって寝具の組み合わせを考えて快適な温度にしてあげています」。(沙希子さん)

 

クロちゃんのお部屋は徹底して室温調整がされています。

 

クーラーやヒーターだけに頼るのではなく、出来るだけ温度差が出ないように気遣っているのです。

温度計

クレート入り口の温度計、上部にも別のタイプの温度計がかけられている

 

温度計も上下に1つずつと徹底していて、温度差をなくすことで身体の負担を減らし、快適な生活を実現しています。

 

クロちゃんが快適であるために気をつけていること

ダックス

食欲旺盛なクロちゃん。食べる時は優しく補助してあげる

 

他にも工夫していることや気をつけていることがいくつかあります。

 

・段差

部屋の段差はもちろんのこと、一緒に寝ている布団も段差をなくしています。

 

「万が一布団の端から転げ落ちても大丈夫なように、周りにも布団を敷いています」。(沙希子さん)

 

・声がけ

とにかく声をかける。YouTubeなどで子犬や子猫の声を聞かせることも。

 

・清潔を保つ

お風呂は2ヶ月に1度、自分たちでお風呂マットを敷いて負担のないようにしながら入れています。

 

また、寝る前に毎日、蒸しタオル等で身体を拭く“清拭”も。

 

ご夫妻は人間の訪問介護を営まれていて、仕事上の経験から清潔を保つことはとても気持ちが良いということをわかっているため、クロちゃんの体をキレイにすることも大切にしているそうです。

 

「清拭するためのタオルは電子レンジでチンチンに熱くしてから冷ます方がさっぱりするんですよ。

 

お湯ならMAX60度にしてから冷ますのが良いです」。(沙希子さん)

 

ホットタオルで全身を拭くことで、血液の循環も良くなります。クロちゃんの艶々の毛並みは毎日のこの習慣から来ているのかもしれません。

 

深い愛情と信頼関係で結ばれて

ダックスと家族

お母さま、親戚の皆様と

 

マイペースでベタベタされるのが嫌いだというクロちゃんでしたが、お話を色々とお伺いしているうちに、甘えん坊の部分も見えてきました。

 

海に行った時、ご主人の車と間違えて他の車の後を追ってしまったこと。目が見えなくても安心して歩き、食べ、寝ていること。

 

クールに見えても家族のことが大好きで心から信頼しているのです。

 

わかりやすく甘えなくても、わかってくれる人たちがいるからクールにしていられるのですよね。

 

一緒のお布団で気持ちよく眠る時間は最高に幸せな時に違いありません。

ダックスと家族

0年9ヶ月、今までもこれからも一緒に

 

最後にクロちゃんを迎えた頃のエピソードを聞かせてくださいました。

 

実は元々はご主人が欲しくて飼ったのに、面倒を見ないのでご両親や奥様が一生懸命面倒を見たのだそうです。

 

「でもそれがよかったのかな。みんなで見ることになって」。(沙希子さん)

 

「まぁ、結果オーライってことですね(笑)」。(宝利さん)

ダックスと家族

 

温かさとユーモア、そして幸せが溢れている堀部家には長寿の秘訣がたくさん散りばめられていました。

 

撮影・取材・文/Roco

 

 

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